■aikoの歌で東屋の夜は更ける
この日はかなり寒かった。
ビールから焼酎、そして熱燗の日本酒へと、
我々の酒盛りは切り替わっていった。
酒の弱いタカミツも、最近はチーム文句流に鍛えられつつあり、
缶チューハイ一本でウェーッと吐くようなことはなくなってきた。
だけどそんなこといっても、
「缶チューハイ1本までしか飲めなかったボクですけど、
どうにか3本までなら飲めるようになりました!ワーイ!」という程度なので、
実力的にはまだまだなのである。
買い出しに行くと、彼は必ず「爽やかフルーツ入りサワー!」
のような酒を買い込むのだが、
あんちゃんとオレはこういうタカミツ用の酒を
「ガキ酒」と呼んでいる。
しかしこの日のタカミツはちょっと違っていた。
ガキ酒だけではなく、遂には日本酒の熱燗にまで手を出したのだ。
そしてしこたま飲んでヘロヘロの状態になり、
「ごめん、オレもうギブアップだ。許して〜」
と言いながら、一人でフライング気味にテントに入ってしまったのだ。
残された我々はタカミツのテントに向かって
「ふざけんなよー、ふざけんなよー、オマエ今に見てろよー」
などと意味不明の叫びをあげて、タカミツを糾弾した。
どうして「今に見ていろ」なのかよくはわからないが、とにかく先に寝るなんて
完全に卑怯な戦法であって許すことはできない!もしもホントに寝たりする
ことがあれば、オマエは非国民だぞ!そして他の奴らだってそれは同じだ!
先に寝る奴はただでは済まさないぞ、バーロー!という雰囲気になってきた。
こうなると不思議なもので、ピリピリと緊張感が漂ってきて、益々酒に酔っぱ
らってしまう。適度な緊張感がある状態では、人間は更に酔っぱらって
しまうのだ。
タカミツの次は、あんちゃんである。
海辺の埋め立て地などでよく見られる“液状化現象”というのがあるけれど、
あんちゃんは最近酒を飲むと極度の“オヤジ化現象”を引き起こす。
液状化現象は地震がくると地面がずぶずぶと水浸しになるが、
あんちゃんは酒が入ると“酒浸し”になってしまう。
代表的な行動パターンで言えば、
「へろへろになって酒をこぼす」
「同じ事を何回も言う」
「簡単に記憶をなくす」
など“酒を飲んでやってはイケナイ三種の神器を繰り出してしまう。
このあんちゃんの必殺技は、
被害の無い地域で酒を飲みなが観察しているとかなりオモシロイ。
まず、3分に1回は確実に同じ話をする。
「その話はもう聞いたよ!」
と突っ込んでも、
「あれ?そうだっけか?エヘヘヘヘ〜」
などと、本人を逆に喜ばせてしまうことになる。
次に、だんだんろれつが回らなくなってきて、志村けんの演じる酔っぱらい
のような話し方になってくる。
最終段階に入ると、コップをひっくり返す。それも何回でもやってしまう。
だけどこういう時、本人は相当御機嫌なのである。
気温が低いときには、しゃっくりが止まらなくなる、という技も繰り出す。
酔っぱらい黄金の4点セットとでも言おうか。
この日は久しぶりの「チーム文句の旅」なので、あんちゃんもご満悦の様子だった。
さてそのあんちゃんは、最近買ったというCDを何度も繰り返し聴いていた。
「すーさん、この歌手知ってる?aikoっていうんだよ」
「アイコ?それは一体なんですかぁ?」
オレはあんちゃんに聞いた。
「う〜ん、だめですねぇ、新しいことを覚えようという気力がない人は。
これがいいんだよ、これが。ちゃんと聴きなさい!」
そんな名前の歌手は全く知らなかった。しかし遠藤さんも、
「すーさん、アイコはいいですよ、ホント。よく聞いて下さいよ」
などと、猛烈にお奨めモードなのである。
二人ともそのaikoとかいう名前の歌手が相当お気に入りのようで、
飽きずに何度も何度も聴いている。あんちゃんは更に、ろれつの回らない
口調でつづけた。
「すーさん、曲もいいんだけどね、この歌詞がまたいいんだってば。
ヒジョーに深いんだよ、歌詞の意味がね。よく味わって聴いてみてよ。」
歌詞の内容は、男女が二人で桜の木の下を歩く、いや、春になったら一緒に
歩こうね、そんな風な内容だった。
こっちも何しろ酔っぱらっているのだから、よく聞き取れないのだ。
しかし不思議なことに、今回の旅ではこのaikoっていう歌手の歌を、
まるでチーム文句のテーマ曲のように毎晩奏でることになってしまうのだった。
チーム文句の旅2000 〜春の琵琶湖に大集合の巻〜 -5-