2002 野辺山ツーリング 〔3〕 

夜はますます更けるのである。




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結局鍋の味付けは最終的に全員納得というところへ落ち着いた。
時間をかけて煮込んだことによって、キムチ独特の酸っぱさや、
野菜の生っぽさも、時を経るごとにまろやかになり、スバラシイ
味わいへと変化していった。
この鍋は辛いけれども体は確実に温まった。野菜が超大量に
あったので、その夜の鍋は、2回戦・3回戦へと果てしなくなだれ
込んでいった。
後半戦になるころには、日本酒と焼酎のピッチも上がり、ぐんぐん
下がる気温に対応して、ぬる燗から熱燗へと切り替わっていった。
チーム文句も久しぶりにあんちゃんとオレだけの「二人きり自己満足キャンプ」
から脱却したことで、夜の話題も断然豊富になった。
「究極のかわいこちゃん像」というものについて、何故か激論が交わされた。
理想の女の子をとことんまで突き詰めていくと、一体最後にはどんな女性像
が残るのだろうか。それを3人で勝手放題に話し合った。

あんちゃん曰く、その究極の女性というのは絶対的に
「ベージュのカーディガン」を着ているらしい。
「絶対にベージュのカーディガンなのだ!間違いない!」
これについてあんちゃんは絶対に譲らなかった。そこでオレが質問した。
「うーん、それじゃあその場合、カーディガンの色が薄いピンク色とかではダメ
 なんでしょうか?薄いピンクでは やはり究極にならないのですか?」

「それはダメだね、やっぱりベージュでしょ。それこそが究極なんだよ。そし
 てその女の子はね、ちょっと寒そうに肩をすくめながら、信号待ちとかして
 るね。多分お昼休みでお弁当を買いに行くところだろうね。一日中冷房の
 中にいるから体が冷えちゃってるわけだよ。その子のカーディガンは袖口
 が少し長くてさ、寒いから手のひらは袖口に半分くらい入れて、袖口をつ
 まんでるわけ。この姿がまたかわいいんだなぁ〜。それから中身がパン
 パンになったでっかいお財布とかを両手で持ってるね。そして寒そうに信
 号待ちしてるわけだよ。あくまでも寒そうにね。これ、わかるかなぁ?」
「全然わからんぞ」
コトヤがぼそりと呟きながら、お燗したサケをコッヘルに移し替えた。
それからコトヤが質問する。
「その財布はどんな財布なの?やっぱりブランド物なのか?」
「いやそれはないね。ブランド物っぽく見えるけど、本当は安物なんだよ。 究極の女の子にブランド物は
 似合わないからね。究極の女というのは質素に生きているものなのだよ。ハッハッハ!」

あんちゃんは答えた。どうやらここでいう究極系の女性像というのは、お金持ちではないらしい。どっち
かってうと地味系で、限りなく清楚、でも笑うと笑顔が相当にかわいい、だけどだけど、そんなに大きな声
で派手に笑ったりはしない、そんなところだろうか?(オレもなんだかわからなくなってきた)

「わかる?これが究極の女性像なんだよ?ハッハッハ!」
あんちゃんは勝ち誇ったように笑った。サケの飲み過ぎで全員やや暴走気味であり、なんだかわからな
い話題なんだけれども我々は異様なくらい熱心に語り合った。そもそもどうしてこういう話題になったのか、
それすら今やさっぱりわからない。

「そんなもんわかるかよ、全然わからーん!」
ここでコトヤは遂に白旗を揚げた。そしてそのあと
は究極の理想像を追求することをあきらめ、
ひたすら質問する側にまわってしまった。オレ
は既に前半戦から質問する側に廻っていたの
で、その理想像は今や完全に
「単なるあんちゃんの理想の女」になりつつあった。
「ハッハッハ!いや〜、いないかな〜、そんな女の子!」
まあ、絶対いないだろうねぇ。
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