それにオレ自信、「京都はいいなあ」などと口では言っているが、実際にどこまで本気でそう思っているのか実に怪し
いのである。例えばそういう風情のある庵(いおり)を見るにつけ、オレが思うことと言えば、
「こういう茶室で寝っ転がって、心ゆくまでヒルネをしてみたい」とか、
「この座敷でおいしい漬け物を肴に、日本酒で一杯やりたい」
などと、そんなことばかりなのである。
二条城に行った時なんかも、五箇条の御誓文が発布されたという有名な広間を見て
「この広間に蝋燭一本灯してゆっくりサケが飲んでみたいなー」
などと本気で思っている。いやかなり本気で思っている。

京都っていうのもなんだかブランド品みたいな変なステイタスがあって、同じ山道でも「京都」というだけで格調高く感じ
てしまうオレは変なのだろうか。でもそういう勘違いも含めて京都は楽しい気分になれる場所なのである。
だからいいのだ。そういうことにしよう。
京都の神髄へ突入なのである。
BACK | NEXT
Day 4 〔2〕 大原へ

.






BACK | NEXT
大原三千院に行ったことがある人にはわかると思うが、この付近には菜
の花や紫蘇(シソ)の畑がたくさんある。そういった植物を豊富に使った
漬け物なのである。季節がらタケノコの漬け物などもあり、これがまた
うまそうなのである。
「にいちゃんたち、これは期間限定だよ、おいしいから買おてや」
店のおっちゃんがさかんに売り込みかけてくる。
こういう期間限定モノには弱い。基本的に「生もの」シールが貼ってある
商品の方が通常商品に比べて格段にうまい。それがわかっているだけに
なおさらむらむらしてくる。
■大原漬け物紀行
大原は何度来てもいいなと思うのである。
京都の山の中をゆるゆるとカーブしながら川沿いを
走るのだが、緑も濃く、まるで昔話の舞台でも見てい
るような気分になる山村風景が、京都に来た実感を
かきたててくれるのである。
できればこういう場合、藁葺き屋根の庵とか、ひん曲
がった柿の木かなんかあって、さらに苔だらけの庭と
か異様に狭い茶室とかがあれば、オレとしてはますま
すいいぞと思うのだが、でもそういうものを見ているゆ
とりを、我が道連れのあんちゃん様が許してくださるわ
けもない( だってあんちゃん様にはそういったものに
さっぱり興味が無いのです)。
宝ヶ池を越えて国道367を大原へ向かって走り始める
と、お祭りの光景に出くわした。小さなおみこしにたくさ
んの子供達が群がっており、その向こうには大人のお
みこしも出ていて、周囲は紋付きの着物を着た老人や
地元の人たちでちょっとした人だかりで、いかにも活気
ある風景だった。

こういう光景はとてつもなく嬉しい。京都のお祭りだ。
わざわざUターンして戻り、お祭り気分のまっただ中
へ突入してこの空気を満喫してしまった。
お祭りの風景。
途中、大原のまっただ中、山の緑が実にきれいな
この場所に、柴漬けで有名な土井のおみやげ屋
がある。
「あんちゃん、漬け物食べる?」
「うわ、いいですねー、それは実にグッとくる提案
ですねー!」
信号待ちであんちゃんに声をかけたら実に嬉しそ
うなリアクション。我々はすぐにUターンして漬物屋
に向かった。
「生ものシールが貼ってあるやつは今日中に食べなあきまへんな」
うーん、そうなのか、それじゃあお土産として東京まで持って帰るな
んてできないではないか。
「生ものシールが貼ってある方が絶対的にうまそうだよね。すーさんどうす
 る?」
あんちゃんは聞くのだった。オレもあんちゃんと同意見だ。
そこでオレは思いついた。
「そうだ、生ものは今晩のサケのおつまみにしてしまおうか?どうだどうだ?」
そう提案した。
「うわ、いいですねー、それは実にグッとくる提案ですねー!」
あんちゃんは大いに喜んだ。我ながらスバラシイ提案に、オレも喜ぶ。
そして我々の頭の中は、早くも夜の日本酒&おつけもので一杯になってし
まったのである。
大原へ向かう。
KANSAI TOP