■函館市場
バイクの修理も一通り終わった(やれやれ)。
もう午後3時だ(ホントウだ)。
じゃ、とりあえず飲もう(マジで?もう飲んじゃうの?)。
もう今日は走らないのだ(なんというやる気のなさ)。
このゆとりがいいんだな(そうか?)。
だって旅行なんだもん、なにしたっていいじゃない(観光とかしろよ)。
どうせ雨降ってるし、寒いから移動なんてしたくない(・・・・・)。

(まあ、( )のつぶやきは無視することにしよう)
タクシーに乗って函館の市場へ行った。
雨がしょぼしょぼ降っている。だからというわけではないだろうが、
人が全然いない。朝市はにぎわうらしいが、こんな時間に来てもガラ
ガラである。丼ものやイカ刺を出す小さな店が密集したアーケードが
つづいている。
適当に店を選んで、ビールをたのんだ。つまみは、アワビと塩から。
こんな時間からのんびり酒を飲めるっていうのは、いいなと思う。
まとまった時間があると、こうやって時間を無駄遣いできるのだ。こ
れこそが夏休みだ。
それにしても、なんだかさっぱり北海道に居る感じがしない。昨日か
ら雨ばかりだし、景色も見ていないし観光もしていない。でも、それも
またいいかなと思えた。だって旅ははじまったばかりなのだから。

店を出ると雨が止んでいたので、ぶらぶら函館山の方向に歩いた。
レンガでできた倉庫街があって、ここがちょっとした観光名所になっ
ており、おしゃれなレストランやおみやげ屋が並んでいる。しかし我々
二人にはあまりにも似合わない場所なので、早足で逃げるように通
り過ぎた。
そういえば函館全体に人がちっともいない気がする。ここってどうい
う街なんだろう。函館といえばもっと賑やかな大都市を想像していた
ので、なんとも期待はずれだ。

街のはずれに良い雰囲気のBARがあったので、そこでバーボンを
飲んだ。その店の中だけは、ようやく若者達が集っていたので、な
ぜかわからないが少しホッとした。

実はこの時、チーム文句のメンバーであるタカミツがすぐ近く(大沼)
にいたのだが、予定が合わなくて結局会えず終いだった。店からタ
カミツの携帯に連絡をしてみたのだが、どうも都合が悪いらしいので、
北海道での再会は諦めることにした。せっかく近くに居たのに残念
である。まあでも、そのうちまた会えるだろう。
このように、上陸一日目の夜は全然ツーリングじゃなかった。
いつもの飲みだ。

おばあちゃんの家から歩いて2分のところにライダーハウスがあっ
たのでそこで部屋をとった。客が我々二人しかいない。なんだか寂
れている。そういえばここ数年は北海道を走るライダーが減ってき
たと聞いているが、その影響もあるのだろうか。

翌朝、ライダーハウスの素っ気ない部屋の中で目を覚ました。ここ
は見れば見るほど、小学校時代の友達の家に居るみたいな気がし
てしまう。ちっともツーリングの雰囲気になれない。
雨はまだ降り続いていた。天候が回復するのは午後になるというこ
とだった。
とりあえず朝飯を食うために、またしても我々は朝市へ向かった。
今日は朝からいくら丼を食べた。しかし天気が悪いので、さっぱり気
分が乗らない。

まだ小雨が降っていたが、もうこれ以上ここには居たくないので出発
することにした。北へ向かう前に、病院へ立ち寄ってあんちゃんのおじ
いさんを見舞った。
川沿いの古びた病院に、あんちゃんのおじいさんは居た。病室のカー
テン越しにオレはちらりとその人の姿を見た。思っていたよりも元気そ
うに見えた。しかし言葉がうまく喋れないようで、もごもごと何やらよく
聞き取れない声であんちゃんに話しかけているのが聞こえてきた。
あとであんちゃんに聞いたら、
「ストーブにあたっていけ」とか
「ばぁさん酒を用意しろ」
などと、病院の部屋ではできっこない滅茶苦茶なことばかり言ってい
たらしい。自分がどこにいるのかよくわかっていないのだ。それでもあ
んちゃんが見舞いに来たことはきちんと理解していたようで、そしてそ
のことが嬉しかったようで、自分なりにあんちゃんを歓迎していたよう
である。
その間、オレは病院の中をふらりふらりと歩き回っては時間を潰して
いた。オレはどうも病院の雰囲気というのが苦手である。歩き回って
病室を覗いていると、部屋の中は圧倒的に老人の姿が多かった。そ
んな光景を見ながら、ああ、オレもいつかは年をとるんだろうか?
そして最後はこうやって病院で時を過ごすことになってしまうんだろう
か、などと、退屈にまかせて漠然としたことを考えていた。

お見舞いは、ほんの15分程度で終わった。
「とりあえずじいさんの顔を見られただけでもよかった」
あんちゃんはそう言った(その後1ヶ月、おじいさんは亡くなった。合掌)。



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2002 北海道ツーリング  -4-
函館にもこんなおしゃれなBARがありました。
函館の市場。小さな店がつづく。しかしガラガラである。
アワビとイカの塩辛で一杯。だけどアワビが薄すぎる!
ライダーハウスの部屋。見ているだけで気分がどんよりしてくる。
朝からイクラ丼。
市場の中の喫茶店で朝食後の一服。ここは主に市場関係者の
人が利用するようだ。
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