■持久戦14時間
フェリーターミナルは、またしても大混雑であった。少し早めに到着し
たつもりだったのだが、他のお客さんも同じ事を考えていたようであ
る。何しろ今はお盆なのである。予約受付の窓口へ少しでも早く辿り
着こうとダッシュしてみたが、全ての窓口には「全便満席」の立て札が
悲しく掲げられていた。数社の窓口をハシゴしてみたが、結果は同じ。
特に仙台行きの便などは、36時間後に出発する便のキャンセル待ち
組みが、が早くも新聞紙を敷いて順番待ちを開始しているのであった。
「・・・」
ターミナルに入ってからたったの15分で、我々は全ての状況を把握し
てしまい、ものすごく寡黙になってしまった。今回の旅行、行きも帰りも
こんな状況なのである。これではブルーな気分にもなるというもんだ。
慰めの言葉もありはしない。二人して諦めきって、好き勝手な場所で
好き勝手に本など読みながら好き勝手にふてくされはじめた。

ここからが長い。実に長い。読み始めてから2時間もすれば本なんて
すっかり飽きてしまう。それから居眠りなどしてみるけれど、そんなこと
くらいでは時間は全くつぶれない。我々が待っているのは14時間後に
出発する八戸行きである。
八戸である。
八戸なのである。
あー!またしても我々は東北道720キロを自走しなくてはならないの
か!もうあの道のりを走ることは考えたくもない!本当にブルーだ!

6時間が過ぎた頃、久しぶりにあんちゃんと言葉を交わした。
 「すーさん、ビールでも飲まない?」
見るとあんちゃんが冷えた缶ビールを手にしてオレの前に立っていた。
オレはその時、ターミナルの階段の横にある1メートルくらいのすき間
にすっぽりとはまり込んで寝転がりながら、ひたすら三国志などを読
みふけっていた。
 「あー、ビールですかー、なんかいいですねー」
オレはものすごく久しぶりに心が和んでいくのをしみじみ感じていた。
この6時間くらい、大げさではなくてかなり心がすさんでいたのである。
お互いに言葉も出なかったくらいだ。何もすることがなく、ひたすらに何
かを待っている状況というのは、実に辛いものだ。しかも、待っていても
「確実に乗れる」という保証は無いのであるから、これはなおさらである。

オレたちはイカの薫製をつまみにミニ宴会を開いた。フェリーのキャン
セル待ちがいつから始まるのか、それさえわからない状態である。あま
りにも先のことなので、窓口の前には並んでいる人さえいない。もちろ
んその便に乗ろうとしている人はたくさんいるのだが、それぞれが「いつ
頃から窓口に行って場所取りしようかな」ということを思案している、と
いうような状況であった。
この殺風景なフェリー乗り場で、残りあと8時間も待たなくてはならない。
救われるのは青森のターミナルに比べてここが新築で非常にきれいな
ことくらいである。それから比較的スペースに余裕があるので、ゴロゴロ
している場所が僅かながら確保できることである。



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2002 北海道ツーリング  -19-
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※日高から苫小牧までの間、写真が全くありません。退屈な風景、
  時間の無さ、雨天など、いろいろと事情があるのです。このペー
  ジの写真は文章と無関係なのでご承知置きを。
日高のラーメン屋で無意味にポーズ。
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