■山頂の記憶 

今回の旅の9年前、1994年にも、利尻山に登ったことがある。
ガイドブックに載っていた山頂からの写真があまりにも素晴らしかったので、
その光景をこの目で確かめてみたくなったのだ。

しかし登山をしたことがなかった。
装備は、スニーカーとジーンズ。ザックはデカくて邪魔な100リットル。
水は登山口の湧き水(甘露泉水)を1リットルだけ汲んでいった。
食料は、カップヌードル1個、食パン一斤。それだけ。
山というものを全く理解していなかったのだ。
とにかく晴天のうちに頂上に辿り着こうと慌てていた。

しかし山をなめてると、非常に危ない。
この時は7月で気温が高く、直射日光もきつくてとにかく暑かった。
水は7合目くらいで全部飲んでしまった。
チョコレートも飴も、何も持ってなかった。
頂上に行って気がついたのだが、水が無ければラーメンは食えないのだ。
自分の愚かさに愕然としてしまった。
何もつけない食パンを、ムリヤリ飲み込んでごまかした。

帰り道で脱水状態になり、頭が朦朧としてイライラして、
腹いせに周囲の木の幹を何度もぶん殴っていた。
歩けど歩けど、登山口にたどり着かなかった。
今思うと、結構危なかったと思う。
湧き水までたどり着いた時は、首突っ込んでガブ飲みだった。


ジーパンがまとわりついて、足を上げるのがとにかく辛かった。
ザックがデカ過ぎて、低木にひっかかって歩きにくかった。
スニーカーで足は痛いし、使わなかったバーナーも重かった。

でも、山頂の光景の素晴らしさは、今でも忘れない。
あの時の思い出があるからこそ、こうしてまた登ろうと思ったのである。
2回登って2回とも晴れた。オレは運が良い。


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