■7月22日(1)  道北茫漠

美深を出発し、いよいよオレの好きな「道北なんにも無い地帯」へ突入だ。
国道40号から音威子府(おといねっぷ)で275号に入り、交通量の異様に少ない国道を走る。
途中の道ばたには、黄色い花が群生していた。これは綺麗だとバイクを停めて写真を撮ろうとしたら、
なんと全部たんぽぽだった。たくさんあると、たんぽぽも綺麗なもんだ。

敏音知(ぴんねしり)から中頓別(なかとんべつ)を越え、そこから更に交通量の少ない道道785、道道645を抜ける。
こういう道北のなにもない農道を無意味に無目的に走るのが大好きだ。
観光的な要素は皆無の道だが、人も車も少なく、町も小さく、そこを走り抜けていく感覚というのがなんとも言えないのである。
似たような風景がつづくこともあり、走り抜けてしまうと記憶に残りにくいところかもしれない。
だからこそ、走っている瞬間の全てが愛おしい。
「もしもこの町に住んだとしたら、オレは一体どんな生活をするだろうか?」 
そんなことを自然と空想してしまう。

そもそも道外からここらあたりに来るためには (飛行機でない限り)最短でも小樽から自走してこなくてはならない。
その不便さもあってか、日本の中でも特に隔絶された雰囲気をオレは感じる。
だから、10日間程度の夏休みでは、こんなにのんびりした気持ちで見て回ることもできない。
その10日間が寒かったり雨が降ったりしていれば、ここまで走ってくることすらできないのだ。
北海道の中で、最も遠い地帯。

町を過ぎると、ひたすら原始林がつづいたりする。対向車が殆ど来ない。
次第に頭がぼんやりしてきて、眠くなってくる。しかし、あまりにも何もないので停まれない。
ようやくパーキングエリアを見つけてそこでバイクを停める。
車を停めて、休憩をするためだけのエリア。周囲は原始林。
エンジンを切ると、一気に音が無くなる。暫くすると、鳥と虫の声。
あまりの眠さにヘナヘナとしゃがみこむ。タバコを吸う。
そこら辺から熊でも出てくるんじゃないかと不安。
車は全然通らない。
タバコ一本吸うと、あまりの静けさに落ち着かなくなる。ちょっと怖いくらい。
そのまま早々に出発する。
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(左) こんな風に、道北っぽい人気(ひとけ)の無い道がつづく。
(右) 定かではないが、確か小頓別(しょうとんべつ)の市街。
    市街はこれで全てである。前後数十キロは何も無い地帯
    に忽然と現れる町。オレにはとても印象的なのだ。