■然別湖へ
然別湖までの道のりは快適そのものであった。牧草地帯の中を抜け
る道路はひたすらに真っ直ぐである。久しぶりに晴れた空の下をバイ
クで走った。ヘルメットのシールドを上げて、ぶつかる風を顔中で受け
止めた。周囲は牧草の緑でいっぱいだ。時々畑の中に牧草ロールが
ゴロゴロ転がっている。
そこを抜けると峠道が始まる。峠道は勾配が非常にきつく、一気に上
まで駆け上がる感じである。途中の扇が原展望台からは、雄大な十
勝平野の光景が一望できた。

 然別湖は標高800メートル。北海道で一番高いところにある湖で
あり、冬の凍結が最も早く、解氷も最も遅いという寒さの厳しいとこ
ろだ。主要な都市からの距離が離れていることもあり、ハイシーズ
ンでんも環境客はそれほど多くはない。
湖は木々の向こうから徐々にその姿を現し始める。山の中にひっそ
りと水を湛えたその姿は、いかにも秘境といった神秘性があり、薄気
味悪い感じさえするほどの不思議な静けさがある。
然別湖の周囲は道路が非常に狭く、その狭い山間(やまあい)の道
沿いに、何件かの大きな温泉旅館が建っている。そこを越えて、湖
の反対側で車を停めた。

オレとあんちゃんは念のため海パンを履いてみた。もしも寒くなけれ
ば、泳いでしまってもいいかな、と思っていた。ブーツからサンダル
に履き替えて、それから3人で車からカヌーを降ろした。カヌーは軽
いので、うまく持てば一人でも十分運ぶことができる。
 
カヌーを持って湖畔へと降りた。
湖は周囲をぐるりと山に取り囲まれ、まるで底が平らな皿の中にい
るような感覚になる。
人間というのは隅っことかはじっことかを好む習性があると思うのだ
けれど、ここにいるとそのことを顕著に感じる。皿の底は殊の外ホッ
とできる空間であった。湖の色のなんと蒼いことだろう。湖畔から見
ると、目の前に広がる湖と周囲の山々が如何にもパノラミックで、な
んだか実に、体の中から悪いものがどーっと全部出ていくほどに気
持ちが良かった。
さあ、カヌーを浮かべよう。



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2002 北海道ツーリング  -13-
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然別湖へつづく道。
準備完了。
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