■あとがき その1

バイクが日高に入ったあたりで、
心はすっかり寂しくなっていた。旅も終わっちまったかと。
船に乗った時には なんだか脱力感で一杯だった。
でも、それと同時にホッとしていたのも事実。

自分の旅は、いつでもテントを基本にしている。
時々誘惑に負けて友人邸に転がり込んでしまうけれども、
でもやっぱり、旅はテントと決めている。
その方が、面倒なことに巻き込まれずに済むからだ。

宿に泊まると、いろいろと規則がうるさかったりするし、
他の人に気をつかったりもするけれど、
テントなら縛られずに自由に行動できる。
それにテントは個室生活である。
だから、どんな場所でも違和感無くすぐに溶け込める。

反対に言えば、
テントの旅ができなくなると、旅が成立しなくなってしまう。
秋が深まり、雨や寒さが厳しくなってきて、少し辛かった。
船に乗ってホッとしたのは、
おそらくそこから解き放たれた安心感もあるのだろう。


バイクに乗って一人で旅していると、
いろんなところですぐに、一人旅同士でともだちになれる。
行動も自由。好きな時に、思った通りに行動できる。

しかし一人で気楽な反面、寂しいなと思うことも時にある。
夕方、スーパーに食料の買出しに行くと、
ご家庭の主婦のみなさんが買い物をしては、
子供たちと一緒に家へ向かって車を走らせていく。
近くの家からは、暖かい色の灯りが漏れてきて、
なにやらうまそうな夕食の香りが漂ってくる。
そういう時、自分は寒い中これからバイクで走り、
真っ暗なキャンプ場に戻って一人メシを食わなければならないと思うと、
急激に周囲の人々が羨ましく思えたりするのである。

こういう情感って、宿に泊まっているとわからない感覚だと思う。
いつでも多少の切なさが伴うのがテントの旅だと思う。
だからこそ、旅人同士は共感し、すぐに仲良くなれるのだろう。

                           (あとがき その2へつづく)

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