■7月31日  第二ステージ

あんちゃんをフェリーターミナルで見送った。
ささやかながら、今日はヒルメシ代をオレが払った。
実は夕べの飲み食いは、全てあんちゃんが勘定を済ませてしまったのだ。
「一生に一度の長旅なんだから、スーさん一日でも長く北海道にいてくれよ!」
そう言って、全部出してくれたのだ。だからヒルメシ代は、ちっぽけな恩返しなのである。

天売焼尻のフェリーとは比べモノにならない巨大なフェリーが停船していた。
あんちゃんは長い長いスロープを登って船の中に消えていった。
その後あんちゃんはデッキに出てきたが、出航するまで待つのも面倒なので、
オレの方が先に港から離れた。さらばだ、あんちゃん。

さぁ、オレはこの先どうしようか。
もともと北海道に来る前から、オレは何のプランも持っていなかったのだ。
いざ港を離れたのはいいけれど、行き先が決まらずに停まってしまった。

本屋に行き、新しいキャンプ場ガイドを買い込み、小樽の町中でタバコを吸いながら、ぼんやりと地図を眺めた。

道南に行くことにしてみた。

 「あんちゃん、道南って面白い?」
 「うーん、道南は、どうなんだろうね?」
さっきまでそんなくだらない会話をしていたので、それじゃあ本当に道南でも行ってみようか、と思ったのだ。

洞爺湖の近くを通り、長万部(おしゃまんべ)、八雲を通り抜け、人気(ひとけ)の無い国道を走り、鉛川温泉というところへ来た。
真横に温泉のあるキャンプ場だ。
肉と野菜をトマトジュースで煮こんだデタラメ料理をつくりながら、酒を飲んだ。

羽幌の港に到着した時に、既にオレとあんちゃんの旅は終わっていたような気がする。
相棒がいなくなった瞬間というのは、どうしたらいいのかわからないくらい空虚な気分になるものだ。
これからどこへ行こうか?

今夜は早寝してしまおうかと思っていたが、
夕暮れを眺めながら一人酒を飲んでいたら、また妙に楽しくなってきた。
一人もまたよし。
もうすぐ料理もできあがりそうだ。
温泉は目の前だけど、きっと今夜はパスしてしまうんだろうな。
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旅も終わりか・・・と、オレまでそんな気がしてしまう。
でも、オレの旅は、まだまだつづくのだ。