■7月29日(2)  さらばおばちゃん

夕方になり、ようやくフェリーの時間がやってきた。
なんとなく気恥ずかしかったが、森脇に行って記念撮影をした。
 「また必ず来るんだよ。次に来るときには、彼女と一緒においで!」
おばちゃんはそう言って笑った。
 「いやー、そればっかりは約束できないなー、ハッハッハ!」
あんちゃんはそう言って笑った。みんな笑った。

 「これで二人でおいしいものでも食べなさい。何もしてあげられなかったし」
見るとオレの手に、千円札が数枚。
 「ちょっと待ってよおばちゃん!さんざん世話になっちゃった上に、
  これはいくら何でもこれは受け取れないよ〜!」
オレは全力で断ったが、なんだかおばちゃんのパワーに負けてしまい、
結局この歳になって小遣いをもらってしまったのだった。
あんちゃんもオレの顔を見ながら苦笑いである。

森脇のおじちゃんとおばちゃんは、船の我々が見えなくなるまで手を振ってくれた。
一体この感じは何なんだろう?
少しだけジンときてしまっているオレって、ちょっとヤバイ?
この数日間、島での時間は、なんだか実に、夢の中のようでもあった。
その締めくくりに、小遣いまでくれたおばちゃんが見送ってくれて、
それは妙にウェットな喜ばしさであり、少し感激してしまった。

おじちゃんとおばちゃんが見えなくなると、オレとあんちゃんは、
なんとなく別の場所に離れて座った。なんだか不思議と照れくさかった。
そして、我々の限りなく贅沢な退屈時間は、これにて幕を閉じたのである。

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