■7月10日(2)  少年との夜

少年もあんちゃん同様、昔は日本中を旅した男である
我々は偶然礼文島のキャンプ場で出会い、その後もずっとつき合いがつづいている。

「すーさん、いいなぁ!1ヶ月以上も旅行に行くのか、うらやましいよ」
少年はビールを飲みながら笑った。

 「だけど考えてみれば、少年やあんちゃんの方が、昔はもっと長い旅をしているんだろう?
  それにくられべば、オレの旅行なんて短いほうだぞ」オレは言った。
 「そうか、そうだよね、言われてみればオレたちの方がよほど遊んでるね。ハハハ!」
  そうなのである。我々はみんな放浪癖があり、それぞれがバイクに乗っていろいろなところを旅してまわっているのである。
  焚き火をして酒を飲み、大笑いする。それが我々のいつもの旅なのだ。

ところでここの居酒屋には、少年が何度か会ったことのある女性が偶然働いていた。
一見普通の日本人としか見えなかったが、彼女は実はモンゴルからの留学生だった。
顔つきが日本人と似ていることもあるが、日本に来てわずか9ヶ月なのに、実に流ちょうな日本語を話すので、
まさか外国人とは思わなかったのだ。
一体どうやって日本語を覚えたのか質問してみたが、教科書で勉強するのではなく、とにかく友達をつくって耳で覚えることだと
言っていた。そうか、そうなのか、やはり言葉というのは使って覚えるものなんだなぁと妙に関心してしまった。
(その後このモンゴルの女性とはいろいろと関係が出てくるんですが、そのつづきは少年に任せることにしましょうか)

かっこつけて店の勘定を全て払ったオレであったが、長旅を思うと懐具合が不安になるのが実状だった。
でも、これでいいのだ。少年よ、ありがとう。

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(左) 少年の家に向かう下り坂。歩くのには何の問題も無いが、荷物満載の
    バイクには相当怖い道である。左半分は階段なので、バイクが走れる
    のは実質的に道の半分だけ。急勾配なので、途中で止まるのは難しい。
    降りている時は、下から人が来ないことを願うのみ。
(右上)少年の家から帰る時はこの踏切を渡る。これがまたバイクにとっては
     怖い道なのだ。階段を降りて、狭い踏切を渡る。ドキドキなのだ。
     少年の家に辿り着くのは毎回大変なのである。
(右下)少年邸前にて。出発前の記念撮影。