■7月14日(3)  辞め組の夜

今夜は一体どこで泊まるべきか暫く悩んでいたら、運良くもう一人ライダーさんがキャンプ場に現れてくれた。
これはチャンスとばかり、その人を無理やり道連れにしてしまった。これでどうにか夜を越せそうだ。
キャンプ場の周囲は1mくらいの土手になっていて、土手沿いにテントを張れば少しだけ風が凌げる。
土手の向こうは断崖絶壁。強風の中、怖々下を覗き込むと、日本海の荒波が遙か数十メートル下に見える。
しかしそれにしても寒々しい雰囲気だ。
秘境感がありすぎて、ちょっと戸惑ってしまう  (まあ、それも悪くはないけれど)。

すぐ近くに温泉があったので、海を見ながら入浴した。
温泉を出て、目の前の商店に入った。しかし、小さな店で、インスタントラーメンくらいしか売っていない。
でもまあ、今夜はラーメンと生ビールでガマンすることにした。今さら20キロも離れた町まで戻る気もしないのだ。

キャンプ場に帰ってみると、ライダーが更にもう一人増えていた。
原付に乗ってきたこの人、よく見たら、夕べのキャンプ場で隣にテントを張っていたおじさんだった。
ホンダの巨大なバイク(ゴールドウィング)に乗ってきた人だ。話を聞いたら、バイクで島へ渡ると料金が高いので、
瀬棚の港に置きっぱなしにして、島ではレンタルバイクで移動しているらしい。
50歳は越えていると思われたので「優雅なご身分で羨ましいな」と思ったらそうでもなくて、
実は早期退職で一部上場企業を辞めたばかりらしい。

おじさんは言った。
 「出かける前にさ、かあちゃん(奥さん)にさ、今まで頑張ってきたんだから、暫く好きなことしてくればいいって言われてよ、
 それでさ、今ぐるぐる回ってんだよ。だけど母ちゃんから渡された金が無くなりそうだから、もう帰るんだよ。ハハハ!」
なるほど、そうするとこのおじさん、年齢こそ違えど、やってることはオレとあまり変わらないってことか。
そのことをおじさんに話したら、
 「おう、なんだ!オマエも会社辞めて来たのか?だったらオマエはオレの仲間だなあ!よし、飲もうぜ飲もうぜ!」
おじさんはそう言って、更に笑った。だからオレも笑った。
これから先の旅でも、こんな「辞め組」にオレは数々会うことになるのである。
う〜ん、時代だなあ・・・。

猛烈に強い風の中、寒さ対策でカッパを着込んだまま、この晩はライダー3人で夜中まで酒を飲んだのだった。
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岬のキャンプ場に陽が沈む。