■プロローグ
客先で最後の仕事が終わったので、オレは駅の近くにある喫茶店に
入った。
暑い日だった。
夕方5時の店内に客はオレ一人で、薄暗い店内は冷房が利いていて
気だるい感じが心地よかった。オレはジンジャエールを注文した。
全ての仕事が終わり、あとは夏休みへと突入するのみである。休み前
の追い込みで、ここ数日間ものすごくいろいろと立て込んでいたが、そ
ういう全てのものが「ぎゅわー」っと水蒸気を吹き上げながら止まってい
く感じがした。オレは一人、ジンジャエールで乾杯した。おそらく今この
瞬間が、最も夏休みを実感できる至福の瞬間なんだろうなぁ。

3年ぶりの北海道である。
なんだか妙に嬉しいのである。
オレにとって北海道というのは やはり何度行っても相変わらず特別な
場所なのである。最近行ったアメリカや屋久島がいくらすごいといって
も、北海道はそういうものとはまた別なポジションにある場所なのだ。
「北海道に行くことは自分にとって帰省のようなものだ」と以前誰かに
話したことがあるけれど、やはり今でもそんな風に感じている。自然の
厳しさも風景の美しさも含めて、なんとも心から落ち着ける、というより
もオレにとって「しっくりと来る場所」、それが北海道なのである。

だが、
今回の旅行記には「ステキ!北海道」的なものは殆ど出てこないの
である。それが何故なのかということは読み進んでいただければ次
第にわかることなのだが、とにかくこの旅行記には、そいういう期待
は持たないでもらいたい。どちらかといえば今回は、土日に行く短い
ツーリング日記の延長、いやもしかするとそれよりも更にのらくらとし
た、「最も北海道らしくない」旅かもしれない。きれいで雄大な景色と
か、おいしい食べ物とか、ステキな出会いとかをイメージしている人
がいたら、そういう期待はきっちり裏切れる自信があるのでご注意
あれ。

さて今回の道連れだが、オレのいつものバイク仲間「チーム文句」と
一緒に行くことになった。
でも「チーム」って言ったって、実際に行くのは「オレ」と「あんちゃん」
の2人だけなのである。最近のチーム文句は実質二人サークル状
態で、「チーム自己満足」の状態がつづいており、なんとも寂しい限り
だ(だからと言って別に誰でもいいから参加して欲しいってわけじゃ
ないよ)。

その「チーム文句」って何?という人のために説明しておこう。そもそ
ものチーム文句の始まりは、今を遡ること5年、1997年の北海道は
礼文島(れぶんとう)だった。
船泊(ふなどまり)という港町にある日本の果てのキャンプ場に偶然集
まった我々6人の仲間達、あんちゃん、少年、モト子、先生、タカミツ、
オレの6人が初期のチーム文句メンバーだ。毎晩オサケ飲んで悪態
ばかり吐いていたから「チーム文句」なんていう妙な名前が自然とつい
てしまったのだ。
文句と言っても単なる愚痴や不満を言うのではなくて、どちらかという
と、自分たちが笑いたいがために「敢えて文句を言ってる」という感じで
ある。
わかりにくいかもしれないけど、チーム文句を簡単に説明するとこうい
うことになる。これ以上は、説明するよりも旅行記を読んでもらった方
が早いと思う。これ以外のものも含めて是非読んでみていただきたい。
それがチーム文句を理解する一番の近道だと思う(理解したいと思う人
がいれば、の話だけど)。

そしてあんちゃんというのはオレのバイク仲間であり飲み仲間であり、
チーム文句の中心的存在なのである(と言ってもただオサケ飲んでる
だけだったりするが)。




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2002 北海道ツーリング  -1-
出発前の積み込み。このわくわくする瞬間は、1年にたった
1度しか味わえない。
上尾インターで地図を見るエンドウさんとあんちゃん。